看護師はいつも悩んでいる
だから看護師やめられない

今でも私を支える、患者さんの言葉と笑顔

入職して私が最初に配属されたのは呼吸器科でした。

実習、国家試験、就職試験となんとかパスし、意気揚々と始めた看護師の仕事。
しかし私は思った以上のギャップに悩まされ、完全に壁にぶつかっていました。
なんのギャップって、思った以上に自分ができない看護師だったことです。
今なら多少できなくても、
「始めたばかりの仕事なんだか仕方ない、とにかく地道にやることをきちんとやるんだ!」
 なんて、へこたれながらも思えるかもしれません。
しかし当時の私は物覚えも悪いし仕事も遅い。
小さなミスもあり、この仕事に向いてないんだ、辞めたい……と常に思っている状態でした。

仕事は多忙で残業も多く、レポートや看護技術の自主練習もあり、休日出勤も当たり前でした。
それが余計に私の辞めたいという願望を強くしていました。

その頃、病棟には2~3人の人工呼吸器をつけた患者さんがいたと思います。
相変わらずただただ仕事をこなすだけで精いっぱいで、常に焦っていました。
もちろん焦りがミスにつながることはわかっています。
それでも先輩のフォローを受けながらも休憩にも入れないくらい仕事に時間のかかる私は、焦らずにはいられませんでした。

人工呼吸器をつけている患者さんは、観察項目も多いし処置もあり、検温にもなにかと時間がかかります。
それに人工呼吸だという時点で大きなリスクを背負っている患者さんだと思うと、緊張もしました。

私が受け持っていたのは60代の女性の患者さんでした。
もともと他疾患で人工呼吸器を装着しており、そのときは軽度の肺炎を患い入院していました。
肺炎は改善し、もうすぐ退院だという頃でした。

その患者さんは寝たきりでしたが意識ははっきりしており、意思疎通はホワイトボードに筆談で行っていました。
しかしその筆談は、文字がかなり崩れており、慣れた家族以外はなかなか読み取れないのです。

ある日検温を終えると彼女は何度も私に何かを伝えようとしました。
しかし字は読み取れない。
家族のように読み取ってあげられない申し訳なさと、なんとか読み取って要望を聞かなければという使命感、そして早く他の患者さんの検温に回らなければという焦りが私の中で交錯していました。

どうしようどうしよう、わからない、次にいかなきゃ、でも聞かなきゃ……。

私の顔は焦りでとても険しかったと思います。
それでも彼女はゆっくりと穏やかな雰囲気で何度も伝えようとするのです。
そして、なぜか急にその字が理解できました。

「がんばってね……?」

理解できたその文字を声に出すと、彼女がにこっとして頷きました。
彼女は、毎日汗だくになりながら右往左往している私を見ていて、励ましてくれたのです。
自分だって、苦しかったはずなのに。
その瞬間、自分のなかでなにかがストンと落ちました。
ホワイトボードに書かれた崩れた文字を見ながら
「私、ダメだけど、やっぱり頑張らなきゃいけない」

彼女の言葉と、にこっと頷いたその顔は今でも忘れません。
ダメだし辛かったけれど、スタッフにや患者さんに支えられ、結婚するまで10年以上勤めることができました。
そして今でも看護職を続けることができるのは、彼女のおかげ。
そう思います。